大空間を構成する構造体

 市民懇話会でまとめられた基本構想、実施計画専門部会からの提言書などから、いくつかのポイントが浮かび上がってきた。最も重要な機能として防災拠点機能と情報発信機能がある。また建物の構成においてもユニバーサルデザイン、開放的で可変性のある工法、長良杉等の本物志向の素材利用が求められている。

 そこで私たちは木構造による大空間の提案を行った。大空間とすることで、一時避難場所としての空間を確保し、運営時の要求に応じた内部間仕切りの変更が可能な柔軟な空間となる。

 さらに、この空間構成に使う素材は長良川流域の多く分布する杉材を用いることとした。素材の持ち味を活かしメンテナンスを行うことで、経年変化を経てより美しくなる。

 

深く大きな切り妻屋根

 清流長良川左岸に位置する本敷地は、周囲に重要文化材の美濃橋や小倉山城址、古城山に囲まれ、美しい景観が印象的である。この美しい景観を崩すことなく、道の駅としての存在感を出し、さらに大きな空間を構成することが必要となった。

 そこで主要な建物を二つに集約し、低く抑えられた軒先から棟に向かって大きく迫り出す切妻屋根として特徴ある外観を形づくった。この二棟の建物が来訪者を迎え入れるように段違いで配置される。

 大きな切り妻屋根は、意匠的な要素ばかりでなく、深い軒先や、妻面の迫り出しによって、建物を風雨から守ることに寄与している。また、外壁には木の縦格子が取り付けられ、深い陰影の持つ表情が時間の経過とともに変化する

長良杉利用における効果

 本計画にあたり、上流域の長良川及び板取川の木材蓄積量と、伐採が必要な山林の状況を調査し、構造材に使用する断面を決定した。主な構造部材に戦後造林され間伐を急ぐ79齢級(3545年生)から今後間伐が必要になる10齢級(50年生)の木材を使用した。さらにこれらの齢級のうち断面の大きな材を選択して伐採し(拓伐)、適正価格で購入することで、山に残る小径材の育成を促し、数十年後を見据えて育てていく考えである。

 さらに、これらの木材管理はトレーサビリティの確かさにつながり、上流域から下流域への物語性が生まれた。今回使用した木材積は500m3を越える多大な量となり、これを近くの山から供給したことで、輸送時における環境負荷を大きく減らすことができた。外材の使用率が8割といわれるわが国の木材事情において、平均的な木材を使用した場合と比較して、約3kg-CO2(約ガソリン12千リットル分)の排出CO2を削減したことになる。

 

防災拠点機能

 道の駅として初めて防災拠点施設に認定された本施設は、高い耐震性と防耐火性を確保できるように計画した。

 耐震性に関しては、建築基準法で想定している震度5弱程度の中地震における損傷防止、震度7程度の大地震における倒壊防止に対して、1.5倍の耐震性能を持たせ、地震時においてもゆとりのある構造計画とした。また、暴風時の想定も美濃市の基準風速32/sに対して、34/sとして設計している。

 防耐火性に関しては、建物を木造の準耐火建築物(イ準耐)として、主要構造部を所定の準耐火性能を有する構造とした。柱や梁などの軸組部材は燃えしろ設計を行い、鉛直荷重の支持に必要な断面に45mmづつのゆとり(燃えしろ)を持たせ、45分の火災に耐える性能としている。

 防災備蓄倉庫の700人分の非常食や、停電時に機能する自家発電設備、断水時でも使用できるトイレ、40tの飲料用貯水槽といった設備機能も持ち合わせる。

 

情報発信機能

 国土交通省、及び美濃市が設置する情報版が各所に配され、道路情報や災害情報などが随時発信される。また、各売り場においても、什器に仕込まれた掲示機能により、商品情報等を提供できる機能が埋め込まれている。

 さらに、西棟には来訪者のための情報センターを設け、美濃市ならびに周辺地域の情報提供と自然体験の拠点施設として位置づける。また、インタープリター(解説員・案内員)の配置やハンズ・オン形式の展示など、直接的な情報伝達により美濃のまちへと誘う機能を持たせた。

 運営には地域住民が積極的に参加することで長く愛される施設となるが、その仕組みづくりとして、岐阜県立森林文化アカデミーの学生・及び教員たちも、これらの機能を後ろから支える協同スタイルをとっている。

 

地域材を利用した家具計画

 本施設の設置された家具は全て、岐阜県産材である。特に情報交流室に置かれた大テーブルやスツールは、広葉樹の間伐施行で産出された小径木で構成される。小径木の材の特性を活かしたデザインとなっている。

 

美濃手漉き和紙

 美濃市は古くから和紙の産地として知られてきた。屋根から吊られた京間版の美濃和紙を三枚連結したタペストリーが印象的である。藍や一位などの自然染色を施した自然な色合いが美しい表情を見せている。

また、ガラスに貼られた戸当たり防止用の印も障子用に使用した端材を活用しデザインしたものである。

 

美濃にわか茶屋における多様な構法

■中央棟:立体格子構造

 日本建築の伝統組物(斗、肘木など)を現代的に応用した立体格子構造を採用し、7.5Mの大スパンを可能にしている。妻面においても同様に持ち出すことで、棟部分で最大3.8Mの深い屋根を構成した。

 また、主要な柱は4本合わせ柱として、軸力を受け持つ構造とし、4本柱を中心とした支点桁によって、3.8Mという深い軒先空間を実現した。

 この広い柱間隔の水平構面を強固に固めるため、二重水平構面を用いて、屋根面の力を壁、柱に伝達した。単純な仕口(垂直、水平)の組み合わせによってプレカット加工によるコストを削減を行った。

■西棟:合成梁構造

 小さな断面の材を面材で緊結することで合成梁を構成し、7.5Mの大スパンを可能にした。そのため合成梁に使用する材を小さく押さえることが出来、小コスト化を計った。妻面も合成梁によって持ち出し、3Mの深い軒を構成した。

■接続回廊:木質ラーメン構法

 二つの棟を繋ぐ回廊の機能上、耐力壁を極力減らすため、軸組で耐力を受け持つ木質ラーメン構法を採用した。柱、梁で地震力を受けるため、強固な接合部には、実験によって効果を検証したDボルトを採用した。

■駐輪場:吊り構造

 駐輪スペース側の柱を無くすために、立ち上げた5枚の壁から屋根を支える吊り構造とした。また、天井面に構造用の水平面格子を入れ、屋根をガラスで構成することで、機能と耐震性を両立した。

■防災備蓄倉庫:パネル工法

 実績のある構造用合板による耐力壁で構成し、外観上もシンプルな箱として設置した。また、周囲の設備機器をカバーする木格子と一体感が出るように、長良川からの見え方を考慮して、箱型の片流れの屋根とした。